退職後読んだ本の中に、日本の階級社会に関する興味深いものが2冊あり、わたしのまとめをここに記しておきたい。
会社員生活37年のうちで自分として”謎”だったことが、これらを読んでとても良く、いわゆる腑に落ちたのだ。
さて、先ずはそもそも階級とはなにか、そしてこの記事でどのように定義して論議してゆくかを明らかにしたい。
階級とは、古い国家では法律などで規定された身分であり、階級間の移動はできないか、または非常に難しいものであった。
現代の日本では、法律で決められた階級はなく、国民は平等であり日本国憲法 第14条で、”法の下に平等である”と明記されている。さらに華族などの世襲階級は認めていない。
これを”階級”として、且つ日本に階級は存在しないのであれば、以下のような事は現代には存在しないはずである。
「世襲的に引き継がれる、引き継がざるを得ない身分」や、
「差別を受けるような、立場、所属」、
「階級の間を行き来できない現実」
しかし、大変に残念なことだけれどもこれらは存在し、よって現代に階級が存在する証左となる、と言うことになってしまっている。
ここではこのような事柄をもって”階級”として話を進める。
先ず1冊目は「新・日本の階級社会」橋本健二著
この本は、既に紙の本としては販売されていないが、中古本とKindke版がAmazonのサイトから購入できる。
統計を基に数字で国民の階級の実情を読み解いており、上の定義による”階級”が日本に存在し、特に代々引き継がれてしまっている。又は引き継がれつつある。と結論づけている。
二冊目は「格差と階級の未来」鈴木貴博著
AIを筆頭とした技術革新により、富める者は富み、富を得られない、または得る位置にないものは貧困に落ち、そして中間層がいなくなる、という事が書かれています。
これも残念ながら将来階級間を行き来出来なくなることを予想している。
さて、では私の小さな会社員人生で見てきた事はどうだっただろうか?
結論を先に書けば、”階級は歴然として存在していた”であり、今でもおそらく存在し続けている。
更には、近年その格差が増大していたし、今後も大きくなってゆくと思う。
以下は、これら書籍を読むに加えて私の経験と見聞の上で作成した現代の階級の図である。
①〜③の区切りを表す横線の位置が曖昧なのは、例えば正社員の中間管理職クラスでも、うまく資産を運用できなければ②や③の階層に落ちてしまうことが考えられる為である。
ヒエラルキーの最下層である非正規労働者の層で、例えば一旦シングルマザーで非正規の立場になってしまうと、残念ながら子供を大学に行かせられない、というようなことが起こり得る。そしてその子供も高等教育を受けられなかったこと原因で、上の階層への移動が難しくなってしまう、という事が起きている。勿論例外はある。
2006年までに急速に進んだ小泉改革で、企業が非正規労働者として雇用できる範囲が増え、私の周りにも”短期契約社員”,”長期契約社員”,”パートさん”,”アルバイトさん”、”人材さん”など多数の身分が存在しており、冷静に考えてみれば、驚くような低賃金で且つ福利厚生などの面でも明らかな差別が存在していた。
事実として、正社員の権利を守るために非正規者を低賃金で働かせている、という側面もあるのだ。
私がセブ島に駐在していたのが、ちょうどその小泉改革の最中、2003年から2007年だったため、帰国した後の社内の変わりようには、言われ得ぬ違和感を覚えたことは忘れられない。
以前は、方針や事業計画の下で会社と社員は全体が一体となり動いていた。
各事業では、5年計画が作られこれを3年毎に見直す、というサイクルになっていた。
その事業方針の下でそれぞれの事業場で策定される事業場長方針は、各部長さんが展開し、課長と係長で具体的な活動方針に分けられ、メンバーが個人の行動計画を作成し各自が行動する。という事が定着し、良し悪しはあるけれどもこういう展開の方法が、一体となる基礎になっていた。
どの会社も概ねこんな方針展開を採っていると思う。
しかし非正規者は方針展開の傘には入っておらず、命令系統も、ある非正規社員は係長の指示で、別のある職場では非正規社員には役職のない先輩正社員が指示を出す、というように、職場や職種でまちまちで、その上で給与の低い非正規社員に”会社のために”とか”業績のために”なんてことを言ってみても、その時は真面目な顔で聞いているかも知らんが、方針なんて見たこともないだろうし、会社や事業の状況も、その説明も受ていないので、腑になぞ落ちてはいないのである。
そういう事で、ミクロ的な事例を提示すると、例えば不具合で生産ラインが止まっているような自体になっているのに、その横で非正規の若者達が床に座ってお喋りし大笑いしている。ということが起き得る構図になっているし、実際そういう事が頻繁にあった。
考えてみて欲しい。
彼らにとっては、目先では生産ラインなんて止まったほうがいいのだ。その間仕事をしなくて済むからだ。残念なことだが実際にそうなのだ。仕方ないのだ彼らが得ている、得られる会社や事業の情報が少なすぎる。
一方正社員は、評価や賞与にも影響するであろうし、それ以前に程度の差こそあれ会社に対する忠誠や各自の正義感はゼロではない。
この双方に交わるところはないし、生き方も全く異なる。
まさに別の階級同士が、その違いを曖昧にされた上で、一方は中長期をみて今与えられている使命を完遂するために働き、他方は単に自分の時間をお金に交換しに来ているのである(何度も書くが例外はある)。
当事者としてその現場に居合わせてしまうと、これは時と場合によっては卒倒するほど衝撃的であるし困るし、私が早期退職を決断した一つの理由でもある。
さて、このような視点で見た皆さんの周りの階級社会はどうなっているだろうか?
階級格差がある場合、それをあなたはポジティブに受け入れられ、前向きに仕事ができているだろうか?
また、今はここで書いたような階級格差がみられなくとも、将来そうなる気配をあなたは見逃してはいないだろうか?
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私のもう一つのブログ「50歳からの単独行」も、是非御覧ください。
50歳から再度山に登り始めたお話を小説風に書いています。
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