先日こんな記事を見つけた。
ただ、この記事を読んで、私には懐かしさだけがこみ上げてきた。
もちろん、検図/承認を経ていない図面が社外に出てゆく、という話は論外であり呆れるしか無い。どうして未だにそんな会社が残っているのか不思議だ。
懐かしかったのは寸法指示がおかしい、というところ。
35年以上前、技術部門に入ったばかりの頃、実際に似たような”事件”に遭遇したことがある。
先輩が「失敗したぁ切粉がだけ上がってきちまったぁ」と泣きそうになっている。
なんだなんだと皆で集まっていくと本人曰く「図面で外径と内径の寸法指示を入れ違えてしまったぁ」というのだ。
手にはビニール袋に入ったアルミのきれいな切粉が...切れの良い刃物で削ったばかりのアルミ材はファインシルバーに輝いて本当に美しいのだ。
製造はその切粉を納品してきた、というわけ。
皆大爆笑だった。
内径の指示寸法が、外径の指示寸法より大きい図面にバカ正直に倣い、旋盤にチャックされた材料を加工すれば、当然全部切削して切粉だけが残る。
加工者も加工者でさすがだ。
わかっていながら加工して、ブラックジョークとして現物で実行して抗議してきた、というわけだ。
要は図面品質を上げて欲しい、という技術部門への切なる抗議である。
先輩は血相を変えて製造に走っていき、平謝りしてやり直してもらったらしい。
その時、製造でも先輩のあわてぶり落ち込みぶりを見て爆笑となったそうだ。
ではどうやってこのようなことを防止するのか、だが、
記事にあるような、検図承認を受けないまま図面が出てゆくのは論外としても、検図だけで図面上の誤指示が100%検出できるわけではない。減らせるだけだ。
結局設計者本人の設計品質、作図品質を上げる必要があるのだが、ここに現代の分業と責任至上主義が立ちはだかる、というわけ。
加工機も見たこともなく、もちろん加工したこともない。ましてや加工機自体がほぼ全て自動機になっているから、金属に刃物が入っていく感触も知らない。
さらに今は3DCADで設計し、おそらく自動でおおよその2D図が生成される機能を使っているのだろう。最終的に生成された2D図を自分で確認しながら寸法を入れていくから、記事中の面取り指示などは失敗しやすいのだろうな。
かといって放置はできないのだが。
だから、こういう失敗をする人は、図面上にタダの線を書く、とかチェックする、と言う作業をしているだけなのだ。
それでは100年やっても同じ失敗をするだろうね。
でもこれは社会の構造の問題だから、今後悪くはなって行っても良くはならないだろうね。そして途上国の優秀な若者に抜かれていくのだ。
残念だがトレンドとしてはそうなっている。
だから、徹底的にその辺りを勉強し経験してスキルを上げて自分のモノにしておけば、他とのアドバンテージにはなるはずだ。
しかし、それを持ったとして、企業内でそういう人が評価されるかどうかは別で、その辺りに今の日本の製造業の根本的な問題があるのだろう。
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