今回は「その5」
「その4」以前が未読の方は先ずは一つ前の以下の記事から。
前前前前回からの続きとして予告通り、昔から使われていて今でもその欠点を理解した上で活用すればとても有効な「旧QC7つ道具」の各ツールを一つづつその概要を解説している。
毎回書くが「その1」に書いてある通り、教科書に書かれているような事はネット上にいくらでも転がっているので触れない。基礎情報はツールの名称などで検索して得て欲しい。
ほとんどの人は感じていると思うが、日本(特に政治や行政)には物事が起きてからでないと動かない、という体質的文化がある。
極端な例で言えば、誰かが死なないとそれも繰り返されなければ、安全対策を図らない、という体質だ。
1991年に電通事件というのが起きていたにもかかわらず、これと言った根本対応を取らず、その後2015年に再び若い社員が自殺してからようやく政治や行政が動き始めたのはご存知の通りだ。
健全な憲法条文や法規制を持っていたにも関わらず、効果がある過重労働防止等の動きを取るまでにどれだけ多くの命が失われたのか、戦争でもないのに悲惨な事だ。
私も「日本総ブラック企業時代」を生きた者だが、過重労働については同僚や後輩に恵まれ、自分も頑張って堪えたが、他と比較すれば相当に恵まれていた方だったとも思う。
それでもきつかったな。
さてしかし、製品品質に関してこんな同じような事をやっていたら仕事にならないから、未然防止を行うものだ。そして残念ながら、人の命を救う事よりも、製品品質の悪化を未然に食い止める技術の方が現場でうまく活用されてきた。
今回は「QC7つ道具」の一つである、未然防止ツールの機能も有している「管理図」について説明する。
これまでと同様、著作権とかが面倒だし自分で図を書くのも面倒だから、基本的な事は「QCツール 管理図」で検索してその情報を得て欲しい。
ここでは例の如く、関わるうんちくや思い出を書いてゆきたい。
特性要因図
チェックシート
グラフ
散布図
以上は「その3」までで解説済み
以上で「QC7つ道具」の解説は終了です。次回はTQCの解説を予定しています。
管理図
生産しているものが良い品質である、という条件は雑駁に言えば以下の2点を満足しているというになる。
1.完成品が規格を満足している
2.製造工程が安定していて継続的に求める水準の品物が生産されている
1についてはそれほどの工夫や管理は必要ない。
工程内検査(完成前検査)で規格外のものをハネてしまい、最終検査に投入すれば満足させる事ができてしまう。
中国の取引先の多くは、工程内の監査検査を実施していた。
品質保証担当者が、ランダム時間表に基づいてランダムに工程を指定して、生産されているものをその工程に行って検査する。
そしてさらに、完成前検査という”ズル”な工程を設けておき、不適合品をハネておく。
そしてその社長が言う「ワタシノ工場では合格率が99.97%以上ナンデスヨ。スゴイデショ」。呆れてしまう。
実際、少量生産品や一品物を扱っている企業など、この様な”品質保証”の考え方を持っている企業も少なくないが、これは厳密には”品質保証”をやっているとは言えず、単に作業として”品質確保”しているだけだ。
そういう事なので第2項が大切になってくる。
安定して継続的に品質を確保するためのツールの一つに「管理図」がある、というわけ。
管理図のイメージは既に検索等でわかっているとして進めるが、教科書にしてもネットの解説記事にしても、何のために「管理図」を使うのかは説明せずに、いきなり管理図の書き方使い方を解説しているので、読んだ人はフンフンと読むだけで結局何に使えるのか、どの様な効果が期待できるのか、が、わからないのではないかと思う。
先ず一番大切なのは、その製品の最終品質を確保するために、中間工程や部品、購入品の、どの品質項目の影響が大きいのかを見極めておく事だ。
例えば、ある部品の肝心な品質項目がバラついていたとしても、規格外のものは組立工程で組み付かないのであれば、後工程への流出はなく、最終品質への影響もないという事になる。
この場合は、純粋な品質の問題と言うよりは、組み換えによるロス発生が問題、という事になるから、品質保証のうちの「品質ロス」の問題だ。
「品質ロス」も品質保証の範疇ではあるが、切り分けられる目を持っておいたほうがいい。
そうではなく、構成部品の品質項目が、製品の最終品質になってしまう場合には、これは純粋に製品品質を保証する問題となる。
だから、その生産工程の状態を常時モニターして、規格外になる前に手を打つのだ。
このような場合において「管理図」がその効果を発揮する。
既に情報を得てきていただいていると思うが「管理図」では規格内のばらつきに於いて、その規格値を逸脱してしまう前に手を打つ事ができるよう、規格値よりも厳しいところに管理限界値を設けておく。
管理限界は計算式によって算出される。
そしてその「管理図」を工程から見える場所に掲示し、毎週、毎日、毎時等適切な間隔で測定値をプロットする。言うまでもないが、その特性値が数時間で大きく変化する可能性があるのに、”毎日”でやっていては不適合品が出来てしまうから、対象の特性値の動きをよく知っておく必要がある。
「管理図」には次に説明する”アクション”など必要な事柄も書いて、且つ実施した結果も記入できるようにしておくといいだろう。
例えば化学処理工程で、生成される膜厚が処理液Aのphに影響される、というような事を予め明らかにしておき、そのphが管理限界値を超えた時点で液交換を行う、というように、管理図を使う場合には、必ず管理限界を超えた場合のアクションを設定しておかなければ、ただ「管理図」を書いて掲示しているだけでは、不適合品の発生を防止する事はできない。
私の知っている例でも、アクションを設定していなかったために、とっくに管理限界値を超えていたのに、手を打たないまま不適合品が流出してしまったという事があった。
一方で「管理図」を使わないで似た事をやる場合もある。
上の例で言えば、正常範囲で処理できる部品を数量で目論む事が確実に出来るならば、管理図を使わずに「処理数が10,000個を超えたら」処理液を交換する、という基準にしておけばいい。
数量で管理する場合も、その処理数を工程から見える場所に掲示しておく。
「管理図」を使う事が適切かどうか、使うにしても測定間隔はどうするかなどは、その特性値にも寄るし、工程のばらつきや投入部品のばらつきによって条件が変わるので、対象工程の特性はもちろん、後工程や最終品質との繋がりを知った上で、全体の状況を鑑み適切に判断しなければならない。
こういった品質保証をやっていると、少ないけれど一定割合で必ず出てくるのが「規格を外れてもいないのに処理液を交換しているだと?無駄だ!すぐやめろ」というような事を言い出すアホな経営者や管理者だ。
こういう者が権限を持っている組織には未来はないから、そういう取引先には大事なものは発注しない等の手を打っておく。
自分の会社がそうだった場合どうするか?...それは困ったな。
同族会社等でその彼らが変わる可能性がないのなら転職するしかないかな。
さて、では何故そんな愚かな経営者や管理者がいるのだろうか?
また、そういった者を更生又は排除することは出来ないものか?について、次回「TQC」そして「TQM」という切り口で論議してみたい。
「QC7つ道具は以上です。次回は「TQC(Total Quality Control)」です。
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今日の一曲
「No Rain, No Rainbow」BABYMETAL
*本ブログに掲載している広告とリンクを除く全ての写真はtomo1961又はその家族が撮影したものです。
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