tomo1961’s blog

-55を過ぎてギターを始めた男が早期退職した後の顛末'ing-

今さら聞けない仕事のツール その6 [No.2021-095]

 

今回は「その6」

 

「その5」以前が未読の方は先ずは一つ前の以下の記事から。

tomo1961.hateblo.jp

 

前回の予告通り、今回はTQCについて。

実は「TQC」という呼称は既に古い、今は「TQM」と呼ばれているはずだ。

 

毎回書くが「その1」に書いてある通り、教科書に書かれているような事はネット上にいくらでも転がっているので触れない。基礎情報はツールの名称などで検索して得て欲しい。

 

「TQM」については、本も最低1冊くらいには目を通しておいたほうがいいだろう。

TQM 品質管理入門 (日経文庫)

TQM 品質管理入門 (日経文庫)

  • 作者:山田 秀
  • 発売日: 2006/01/01
  • メディア: 新書
 

 

トヨタ必須の17の品質管理手法を伝授 品質の教科書

トヨタ必須の17の品質管理手法を伝授 品質の教科書

  • 作者:皆川 一二
  • 発売日: 2020/08/20
  • メディア: 単行本
 

 

若い頃、ある先輩の口癖が「夢を見るな」というのだった。

 

先ずは正攻法=教科書的な最低限の基本を押さえた上に、作戦/戦法を組み立てて、さらに皆の合意を得て、組織で実行しなければ夢に終わる、という意味だ。

 

いくら、べき論を主張してみても、こうなったらいいなぁと思いその話をしてみても、それだけでは夢に終わるのが落ちだ。夢を語るのは良いが、それは飲みながらだけにしとけという事になる。

 

もちろん、もう一つの方法として強力なリーダーシップの下、強引にでも実行してゆく、というスタイルもあり、これも一つの有効な手だ。

 

物事を進めるにあたり、どちらを選ぶかは状況と対象による。

 

今回は組織として進める「TQC」,「TQM」をその重要性を解説してゆきたいが、いずれにしても組織で実行するには、トップから経営層、管理者層くらいまでは、最低限の教育が行き届いているのが前提となる。

 

試しに上司に「〇〇さん、うちも組織的に”TQC”に取り組んだほうがいいと思うんですが」なんて言ってみるといい。

 

馬鹿ではない上司なら「おい、今時”TQC”なんて古いことを言ってちゃダメだ。今は”TQM”だし、”TPS”の事もよく勉強しとかんといかんぞ」くらい言えるだろう。

 

アホなら「そんな事より、そもそも仕事というものはなぁ」なんて老害の持論展開が始まっちゃったり。

「いいか、品質品質と言って狭い視野ではダメだ、これからはQCDではなくDQC!日程をきちんと守ってもらわんといかんゾ」とバカ丸出しの事を言い出すやつがいる。

 

残念ながらこれらはどちらも実在した人が言った実話だ。

 

品質診断か何かの時の講話で、時の本部長が「これからはDQCでぇ」という演説をしたときには本当にめまいがしたよ。

 

いずれにしても、そのようなアホな経営者や管理者が実権を持っている組織では、まともな品質管理は出来ない。

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その昔(50年くらい前の話)、品質保証,開発,技術,調達,製造,生産管理,営業などそれぞれの部門が、それぞれの役割を果たせば、品質(Q),コスト(C),日程(D)全て満足する、という考えを持っている人が多かったそうだ。

 

しかし最終的に組織全体のアウトプット=製品となる「品質」が、ただの各部門の仕事の積み重ねで、まともなモノになるはずがない。

 

何故ならば、部門の間では常に利害が対立しているからだ。

 

そういう時代に、QCDを組織ぐるみで、全ての部門が協力しなければ達成できないから「品質」を頂点にして各部門協力しよう。という考え方として「TQC(Total Quality Control) 」が始まったそうだ。

 

始まったと言っても日科技連が提唱したと言ったほうが正しいだろう。

 

但しTQC」の時代はまだ「内部目標を達成する」ための考え方で、内部のKPI達成手段と言っても良い狭い活動だった。

 

これが発展して、顧客重視の観点からマーケットインの一つとして(日科技連で)考え直されたのが「TQM」だ。

 

さて、先ず「QCD」という語の順序の意味を説明しておく。

 

品質(Q)が満たされていなければコスト(C)が良くても意味をなさない。

だって安い不良品など誰も買わないからだ。

 

コスト(C)が満たされなければ日程(D)を守ることが出来ても意味がない。

何故なら、安くなければ競争力がないし、企業として損をしてまで売る意味は、普通はない。

 

品質(Q)が満たされていなければ日程(D)が守られたとしても、顧客は満足しない。

納期通りに不良品を買わされても、顧客の怒りを買うだけだ。

 

そういう事だ。

だからQCDの順番を入れ替えて話をする人はアホだ、という事になる。

 

さらに、SQCDと言っている企業も多いのではないか?

この場合のSはSafety(安全)の意味だ。安全を確保するのが最優先という事になる。当然だろう。

 

TQC」が全員参加で品質の作り込みをしなさい、という事だったのに対して、「TQM」はトップマネジメントのリーダーシップのもとに、マネジメントの責任において品質保証を行い、顧客の満足を満たす、ということになる。

 

これは、ISO9001などの考え方に継承されているし、形だけではない中身のあるISOが出来ているなら、TQMも出来ているという事になる。

 

従って今は、「TQM」にしてもISO9001にしてもトップマネジメントの下で展開されるのがスタンダードだし、そうあるべきだ。

 

だから「TQM」やトヨタのTPS、ISO9001などの導入は、ちゃんとやればトップマネジメントや管理者層への教育効果はかなり高い。

 

認証会社によって大きな温度差があるが、ISOの場合は、例えばBSIやTUVなど大手なら、審査時に必ず管理者に質問し答えさせ、担当者がしゃしゃり出てきて説明できても、またその管理者に聞き返す、というように管理者のレベルが認証に値する状態になっているかも含め、かなり厳しくチェックされる。

 

私の会社では、審査の日にそんな事をしていて毎度時間が無駄になるのが嫌なので、審査員とは管理者だけが受け答えするよう内部で取り決めて、管理者が答えられない場合でも、担当者は直接審査員とやり取りしてはいけない事にしていた。

 

管理者の理解が十分でなく、審査時の受け答えでトチると指摘となるが、それは実力だから仕方ない、と割り切っていた。

 

*しかし実際には、そうしたトチり起因の指摘が最終日以外なら、毎日のクロージングミーティングで、審査員に「アレはこうでした」と、関係evideceと供に説明し、受入れられれば指摘にはならない。

 

管理者が担当者に助けを求めるのは有りだが、実際の場面でやる(やらざるを得ない)と、かなり恥ずかしいので、次は聞かなくても良いように必死で覚えるようになる。

 

そうしなければ、結局実行場面でその管理者が機能しない、という事になるし、そもそも自分で答えられない管理者には、そのポジションにいてもらっては困るのだ。

 

ISO9001の審査というのは大きく2つの観点で行われる。

・取り決めてある規定が、ISO9001の要求を満たしているか?[適合性審査]

・決めた規定を守っているか[有効性審査]

 

だからどちらにしても、管理者が答えられない、説明しきれないということは、普段の品質管理、品質保証に不備があり、TQMが出来ていないという事になる。

 

ちなみに、「ISO担当になると審査の前の晩まで記録の確認が忙しい」などというツイートや記事を見るが、悪いことは言わないから、そういう会社には長居は無用、できるだけ早く転職したほうがいい

 

ISO9001レベルを受けている殆どの会社は、今の時代もう規定は定着していて、普段の生産活動の中で常に正しく記録が出来ていて、前の晩に見直すなんて事をやっている企業は相当下の下だ。

 

そういう会社は、規定はつくってあるが、普段の活動でその規定は守られないのが常態化している。従って規定通りに記録ができておらず、規定と実際に齟齬があるまま、漫然と毎日が過ぎているという事だろう。

 

だから審査が近づくと慌てふためく、という会社なのだから、そんなところの品質に関わっていてはいくら努力しても報われない。

 

そもそも、そういう組織に限って継続遵守する事など到底無理な規定が制定されている事も多い。

 

いずれにしても、審査前にガチャガチャ忙しい会社ではTQMは出来ていないと断言してもいいだろう。

 

逆に、もしあなたが経営者や品質の責任者なら話は簡単だ。

 

「次のISO認証日の3ヶ月前からは、記録の見直しなど認証の準備に関わる作業を一切禁止する」

 

だから普段からきちんとしなさい。とお達しを出せばいいのだ。

 

みんなから「人が足りない」、「時間が足りない」などと不満が噴出すると思うが、それが本当ならば、それは「私達はISOに値しない組織です」と言っているのと同じなのだから、さっさと認証を返上するようマネジメントに提案するしかない。

 

返上が嫌ならやるしかない。

 

そういう事だ、とマネジメントや管理者に理解させるところまでは、品質責任者の仕事だろうな。

 

裏を返せば、TQMが出来ている組織にはISO審査など怖くない、という事になる。

 

私の会社でも、社内規定に「記録には鉛筆など消すことが出来るペンは使用不可」となっているにも関わらず、一向に鉛筆の使用がなくならなず、ISOの審査時にも毎回(マイナーだが)指摘されていた。

 

そこで私は上司の品質保証部長に「総務以外の鉛筆の保有を禁止しましょう」と提案し、部長が経営会議に上程。

 

会議に出席する管理者レベルの人達は、今どき鉛筆なんて使わないので痛くも痒くもなく、すんなり会議を通過し、その後社内では”鉛筆刈り”が展開され、ようやく鉛筆書きの記録が無くなった。

 

長くなったが、以下私の現役時代の名言(?)を披露して記事を締める(締まるかナ?ムリ?)。

マネジメントや管理者/上司は、部下や業務を管理するの仕事。

部下は、上司を操縦(Manipulate)するの仕事。

アーヤみたいにね!

アーヤと魔女

アーヤと魔女

 

 

来週は...どうしようか、QCサークルか5Sあたりの事を書こうと思っています。

あ、改善提案がいいかな?ま、だから...未定です。 

 

ISOの認証を受ける受けないに関わらず、このハンドブックは持っていたほうがいいぜ。チト高いけどな。




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今日の一曲
アルバム「On and On」Jack Johnson

 

*本ブログに掲載している広告とリンクを除く全ての写真はtomo1961又はその家族が撮影したものです。

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私のもう一つのブログ「50歳からの単独行」も、是非御覧ください。
50歳から再度山に登り始めたお話を小説風に書いています。
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