「その7」以前が未読の方は先ずは一つ前の以下の記事から。
前回の予告通り、今回はIEについて。
「IE」は、単に「IE」として広い意味では、経営管理や生産管理向けに用いる科学的な技術手法の総称、という事になっている。
しかし、ここでは「仕事のツール」として範囲を絞っているので、広い意味としてカバーされているいくつかの分野のうちの「作業の改善ツール」の部分を「IE」として説明したい。
毎回書くが「その1」に書いてある通り、教科書に書かれているような所謂 ”吊るしの情報” は、それが吊るされているところに行って得てきて欲しい。
仕事は客観的な事実に基づいて進めるべきだ。
管理者がなんとなく思いつきで「この工程は無駄が多そうなので改善しなさい」なんて指示を出してしまうと、その作業者やリーダは困ってしまう。
しかし前回の締めにも書いたが、だからと言って客観的事実の積み重ねから導き出された解だけを持って方針を決めてしまうのも間違いの元だ。管理者は必ずその意志を持って決断しなくては、そこに存在している意味がない。
また、QC手法などの品質管理手法と、今回紹介するIEなどの改善手法を、前者は品質保証部、後者は生産技術や製造がそれぞれ使うものだ、という理解が一般的のように見受けられるが、それは大きな間違いだ。
実際私の若い頃、一時IEチームが出来て積極的に工程改善が進められていたが、品質保証の知識を持つメンバーが入っておらず、光硬化型接着剤の硬化工程の条件変更を行うのに、現物を10個試流ししただけで量産移行してしまい、大量の不良品が発生して数日間生産工程を停めてしまった。
またそのIEチームはそれに懲りず、同じアプローチで新製品の構造にまで口を出し、その製品向けの生産設備まで新規制作して目先の成果を上げ、その成果は社長賞を受賞した。
しかし、新製品発売数カ月後、市場でほぼ全数が自然破損(プラスティックの部品が相手部品との締結応力で経時後自然に割れてしまう)となり、設計変更、再生産、回収、交換、という大規模な品質事故を起こした。
もちろんそのチームは解散となった。
まぁこれら事例は、単に彼らが無知で無謀な人間の集団だった、という事もあるが、一切の意思を排除し、あまりにも厳密に客観的事実だけに頼った結果の失敗だったと思う。
要は、やるべき理由があり、やらない理由がない、だからやる、という愚か者の論法だ。
客観的事実に頼って事を進める時に注意しなければならないのは、「未知の事実」の存在だ。
わかり易い例を昨日記事として書いておいたので目を通してみて欲しい。
さてしかし、客観的事実は大切だから、出来る限り「未知の事実」を残さないようにする為にも、なんとなくではなく手法やツールを有効に使って、出来る限り多くの事実を手元に集める必要がある。
影響の大きな「未知の事実」が残っていれば、当然のことながら良い結果は得られない。
工程を改善する場合には、その工程が現在どういう状態にあるのかを測定しておく。そして、同じ測定法で改善後の状態を測り、その効果は検証される事になる。
私が社内研修でIEを学んだ時には、その講師から、「IEはアメリカでT型フォードの生産効率を上げるために開発された手法である」と学んだ、と記憶していたのだが、今になって当時のテキストやインターネットを見てみると、どうもそれは間違いのようで、IE手法はT型フォードより随分以前からあったようだ。
「QC7つ道具」のようにIE手法にもいくつかのツールが存在する。
いろいろな分類方法があり私達の時代は以下のようになっていた。
・工程分析
・動作分析
・ストップウォッチ法(時間分析)
・PTS法(時間分析)
・作業の分類
・ワークサンプリング法(稼動分析)
・運搬工程分析(運搬管理)
・ビデオ撮影
最近の書籍やネット情報を見てみると、新たに「IE7つ道具」という用語が作られていて、その7つとは以下のように分類しているようだ。
確かに、古い私から見てもこちらのほうがわかりやすい。
・ タイムスタディ(時間研究)
・ 稼働分析
・ 工程分析
・ 作業分析(動作研究)
・ レイアウト分析
・ マテハン分析
・ 事務工程分析
そういう事で、次回からは順次「IE7つ道具」について現場で適用する際の注意事項や私の思い出を書いてゆく。
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今日の一曲
「Everytime」Britney Spears
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