
こんにちは。春の陽気が心地よい季節ですね。最近は晴れと雨の日がうまい具合に交互に来てくれて先日までのように乾燥しすぎず、ジメジメもせずありがたい気候ですね。
昨日だったか、92歳になる私の母が、心配そうな顔をしてこんなことを言っていました。
「おぃ〜、今病気や怪我をすると4月から点滴ができんくなるらしいよ。気をつけてなきゃねぇ、不安だねぇ……」
母はかなりのテレビ好き。朝はNHKの朝ドラから『あさイチ』への黄金リレー、手仕事に集中するとき以外は、長野朝日放送(5チャンネル)が定番のBGMです。そんな母のような「テレビっ子」にとって、連日のように繰り返される「供給不安」の報道は、まるで明日にも医療現場が止まってしまうかのような恐怖に聞こえるのでしょう。
数字で見る「備蓄」の本当のところ
実際のところ、日本の石油は今どれくらいあるのでしょうか?
資源エネルギー庁が公表しているデータ(石油備蓄の現況)では、
3月末時点での日本の石油備蓄は、なんと234日分。
3月中旬に放出を開始した時点では242日分でしたから、この半月で12日分を放出した計算になります。これだけの物量を戦略的に動かしているわけですから、むしろ「計画通りに供給を支えている」と見るのが正解でしょう。
そもそも、中東情勢が緊迫しているからといって、すべての道が閉ざされたわけではありません。政府や関係機関は、すでに「プランB」をフル稼働させています。
ナフサの供給ルートはこうなっている
点滴チューブや注射器といった医療用プラスチックの原料となる「ナフサ」についても、状況を整理してみましょう。下の表をご覧ください。
| 項目 | 平時(目安) | 現在の状況(対策後) | 備考 |
| 中東以外からの輸入量 | 約45万kl / 月 | 約90万kl / 月 | 米国やアフリカ等から倍増 |
| 国内精製量(供給) | 約120万kl / 月 | 約130万kl / 月 | 国内元売への増産要請による積み増し |
| 民間備蓄(法定) | 70日分 | 55日分(15日分放出中) | 3月16日より放出を開始し、市場へ供給 |
| 国家備蓄(原油換算) | 約90日分 | 継続放出を決定 | 精製原料としてしっかり確保 |
| トータル確保期間 | - | 約4ヶ月分 | 在庫2ヶ月+代替調達等2ヶ月 |
どうでしょうか。中東以外の輸入ルートを平時の2倍に広げ、さらに国内の精製能力をアップ、そこへ備蓄の放出を組み合わせる……。まさに「全方位作戦」で供給網を守っているのよくがわかります。
「点滴がなくなる」は本当か?
「4月から点滴ができなくなる」という言説。お茶を一口飲んで、その間に少し想像力を働かせれば、それがどれほど飛躍した話かがわかります。
それに仮に、今日ナフサの輸入が完全にストップしたとしましょう(実際には代替ルートで入っていますが)。それでも、まずは化学メーカーの工場に原料在庫があり、メーカーの倉庫に完成品在庫があり、さらに卸売業者や病院の倉庫にも流通在庫があります。
これら全てのダムが一度に干上がるなんてことは、物理的に考えてもまずあり得ません。テレビのニュースは「今、現場で起きている一部の困りごと」をクローズアップして伝えがちですが、それが「社会全体の崩壊」を意味するわけではないのです。
情報を自分で「取りに行く」大切さ
もちろん、物流のタイミングで一時的に特定の製品が届きにくくなることは、これからの中東情勢によってはあり得るのかもしれません。しかし、それを「医療の停止」と結びつけて不安を煽るのは、少し度が過ぎているように思えます。
もし皆さんも、ご家族や周囲の方が不安がっていたら、ぜひ公的な数字を教えてあげてください。
石油備蓄の詳しい状況は、以下のリンクから誰でも確認することができます。
■ 石油備蓄の現況(資源エネルギー庁)
(「石油備蓄の状況(推計値の速報)はこちら」をクリックするとPDFが開きます)
冷静に春を楽しみましょう
テレビの向こう側では「大変だ!」と叫んでいても、数字というフィルターを通してみれば、日本という国は意外としたたかに、そして冷静に対策を打っていることがわかります。
「点滴ができなくなるから怪我をしないように」と心配する母の優しさはありがたく受け取りつつ、私は私で、古いバイクのレストアでもしながら、いつも通り淡々と日々を過ごします。
おっと、そろそろ畑の草刈りしなきゃだから刈払機のエンジンの試運転しとかなくちゃな。このエンジンは一旦へそを曲げると調子を戻すまでに手がかかるんですよね。
不確かな情報に振り回されて、せっかくの春の穏やかな気分を台無しにするのはもったいないですからね。皆さんも、まずは温かいお茶でも飲んで、一息つきませんか?