今回は「安全衛生」について。
「その16」以前が未読の方は先ずは一つ前の以下の記事から。
「仕事のツール」と言っているのにどうして「安全衛生」が出てくるのか?と疑問に思う人もいるのではないだろうか?
そういう疑問を感じているあなたが、もし経営層や管理者層に属しているのなら、
あなた。今すぐ人事部に行って自分の降格を申請しなさい。
申請したくないなら今すぐ理解を改めるべきだ。
以前このような記事を書いたが、自分の知識がないことが怖くない人は、他人の安全や命に関わる仕事に就いてはいけない。
もしこれから着手しようとしている仕事の安全が確保できていないのなら着手してはいけない。
第一に安全確保だ。
「安全第一」と書いてあるからその通りにするだけだ。シンプルな話だ。
もっとクドく書けば、「安全衛生」が確保されている事が、仕事そのものの大前提という事になる。
そして守らないヤツがいるから災害や事故が起きる。
さらに、安全に関しては法規制があることも忘れてはいけない。
先ず第一に、労働災害については、事業者にその責任がある。
その責任には「危険予測義務」及び「結果回避義務」があるのだ、という事を頭に置いておかなければならない。
事前に「危険予測義務」を果たし、予測された事態に予め対処しておいた上で、発生してしまわぬよう「結果回避義務」を有する。
それがたとえ従業員の故意であったとしても、だ。
さらに、発生してしまった場合において、心情的にはその原因が企業、組織が負うべきものでないと考えられても、それを立証する責任は事業者、使用者が負う。
そういう法律になっている、という事だ。
もちろん、労働災害には過労や精神疾患、交通事故など就労時間中に発生した全てが含まれる。
では以下、事業者の責任という切り口で論議していこう。
刑事上の責任
労働安全衛生法で、事業者は労働災害防止措置を義務づけられている。
法律文言上「〜しなければならない」と書かれている項目に関して違反した場合は、措置義務違反となる。
例えば、「装置には安全装置を設置しなければならない」とあって事故が起き、安全装置が設置されていなかった場合は、措置義務違反だ。
大体にして普通の装置には安全機構があるハズだと思うだろう。しかしそれは本当だろうか?
これも私の在籍時に発生した事例(別の職場)。
とてもちっぽけな自動部品棚があり、部品を出し入れする通常の作業開口面には安全装置が付いていて、動作時に人の手が棚に入る(実際には入ろうとした)瞬間に動作が停止する。
しかし、部品を棚内部に落下させてしまった場合は、作業者が足元のパネルを外して拾っていた。そしてそれが日常になってしまっていた。
パネルは元々8箇所をビスで固定されていたが、部品落下は日常茶飯事だったため2本だけで仮固定するように ”改善” されてしまっていた。
ある日、落下部品を拾っている最中、別の作業者がボタンを押して棚を回転させてしまい、その時に部品を拾っていた人は回転棚に腕を巻き込まれ、上腕を骨折する大怪我を負ってしまった。
部品を拾うのが”日常”ならば、足元のパネルを開いた状態でも安全装置が必要だ。
これが措置義務違反となる。
「そんなのその作業者が勝手にやったことじゃないか!」と思うだろうし、実際 ”改善” と称して勝手に異常作業を日常化してしまっていたのだ。
しかし、法律上は何を言っても始まらない。
事業者には立証責任があるので、本人が「やりました」と言っただけではダメで、そういう行為、この例でいえば「パネルを開けて部品を拾う」に対して、
・足元のパネルを開けてはいけない、という運用ルールが存在していたのか?
・良いとするなら、その基準と報告はどうするのか規定されていたのか?
・パネルが空いているときの状態表示規定を定めてあったのか?
・ボタンを押す時にパネルを開けて部品を拾っている作業者がいないか確認する規定があったのか?
などなど
発生したことに対して、行政は理不尽なまでに事業者の瑕疵になるように攻めてくる。
発生させた本人が、会社で定めたあらゆる安全規定に違反して、事故を発生させるために故意に行動した、という事が立証できない限り事業者の責任になる。
大抵の場合事業者責任になるだろう。
民事上の責任
民事上の責任には以下のような項目がある。
これらをキーワードにして調べ理解しておくといい。
・不法行為責任
・運行供用者責任
・安全衛生管理体制
この記事だけでは当然理解しきれないと思うので、責任のある立場にいるのに、「俺はどうも知っていなければならないことを知らないかも」と思った方は、当然の義務と権利として、上長に対して安全衛生教育の受講を要求しよう。
もしあなたが働いている企業がブラックで、そういう研修を受けさせてくれないなら、証拠が残る形(メールがいい)で要求した事実を記録しておこう。
3回要求して断られた記録が残っていれば、あなたの責任を回避できる可能性がある。
安全衛生教育は各県の行政が実施しているか、又は行政指定の格安の研修があるはずなので、先ずはそういった研修を受講することによって、最低限の知識を得て、職場に戻って実践しておく。
安全衛生の象徴的なアイコンはなんと言ってもヘルメット、ゴーグルだ。
ヘルメットを必要とする作業領域に入るには「必ず着用してください」と言われるが、髪型を気にする若者や女性には、我々年配者が思う以上につらい事らしく、ある見学者は「着用しなければならないなら入らない」と言ってその領域の見学を断った、そんな出来事があったと、在籍中に聞いた事がある。
必要なものは必要だから着用するのだから、着用できないならその領域には入れない。
そういう事だ。
さて、最近の最も重い安全衛生の話題として、やはりコロナがあるだろう。
ワクチンを摂取するのは個人の自由で選択に自由がある。
但し、それを選択した結果必然的に発生する事柄も同時に選択している、という事も知っていなければいけない。
ヘルメットと同様、ワクチン接種が安全配慮義務上その作業領域に必要だと、その事業者が判断しているのなら、それは必須となる。
摂取しないなら、その領域への入場はできない、これも同時に選択している事になる。これが必然の選択という事だ。
これまでも大変な苦労をされてきて、引き続き大変な状況の医療関係者には、辛い選択になると思うが、残念ながら「摂取したくないが作業領域に入って仕事をしたい」というのは、報道機関が独自に流行らせた”ワクハラ”というものではなく、単に同時には成立しない要求なのだ。
これは職業人として理解できなければいけない。
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「永遠の不在証明」東京事変
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