tomo1961’s blog

-55を過ぎてギターを始めた男が早期退職した後の顛末'ing-

今さら聞けない仕事のツール その15 [No.2021-162]

 

今回は「標準化」について。

「その14」以前が未読の方は先ずは一つ前の以下の記事から。

tomo1961.hateblo.jp

 

さて、「標準化」という言葉を聞くだけで気分が悪くなったり、胸クソが悪くなるような、そもそも「標準化」について誤解している人もいるのではないだろうか?

 

「マニュアル人間のことでしょ」というような偏見を持っている人もいる。

 

しかしそれらは全て間違っているんだ。

 

標準化の最も基礎となる事を、ほとんどの人が知らないか、知っていても忘れてしまっている。

 

「標準化とは、その時点で最も良いと考えられる方法を統一し文書化し遵守し随時見直し都度修正し、そのサイクルを回し続ける事」

 

どうだろうか、鋭い方はもうわかったと思うが、多くは解説無しでこう書いただけではまだピンとこないだろう。

 

以下、解説してゆくが、今回も大きなところは、先ずは吊るしの情報を読んで理解してきてくれ。

標準化 - Wikipedia

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「標準化」とは何か?クドイが大切なところなのでもう一度、今度はわかりやすさのため番号付きで箇条書きにしてみる。

 

標準化とは、

以前のISO9001で「スパイラルアップ」として明記していた事もある。

ここで違和感を感じるのは、おそらく1,6,7,8ではないだろうか?

 

誤解や偏見を持っている方は、決まった事、決められた事は守り続けなければならない、文句を言う余地はない、という間違った観念を持っている。

 

だからそういう人は、「随時見直して」良いなんて夢にも思っていないし、「都度修正して」いいわけねーだろ、なんて勘違いをして、不満に思ったり頭にきたりしているのだ。

 

1.その時点で

あたりまえだが8番の項が存在している以上、「標準化」されたその方法は、あくまでも”その時点で”最高(だった)もの、というだけだ。

 

その時点とは、その標準が作られた時、または前回修正された時のこと。

 

だから長年見直されていない”標準”はもう「標準」とは言えない状態になってしまっている可能性がある。

 

2.最も良いと考えられる方法を、

当然出来る限り最良の方法を選定するが、気をつけなければならないのが、複数が担当している仕事でAさんのやり方が最も良さそうだったとしても、部分的にはBさん、Cさんのやり方に良いところがあるかもしれないのだ。

 

だから、全てのやり方をレビューして、最高のものをつくる事を心がける事。

 

最悪なのが、ある一人が標準化して、他の者の同意を得ずに執行し、他が盲目的に追随する事だ。

 

但し、このような現象を逆手に取って、あなただけが優位性を得るという、ずるい応用方法もある。これは後で解説する。

 

3.統一して

文書化する前に統一可能かどうかを評価する。

 

すごく単純な例では、例えば左利きの人の作業方法を考慮せずに統一してしまうと困る人が出る、という場合がある。

 

4.文書化して

これはあたりまえだが、統一して決めた事は必ず文書化する。

 

小さな会社に多いが、折角関係者で話し合い同意して統一までしたのに、口頭の”口約束”に留めてしまい、時が経過したり人が変わったりで、ある時大きな不具合につながる、という現象だ。

 

だから小さな事でも必ず文書化する

 

文書化するというのは、その文書の原本と実際に作業に使うコピーを運用するということだ。

 

文書化までは頑張ったが、書いたものを職域の壁に貼って済ませているものも、これは文書化とは言えない、口頭とそれほど違わないレベルと言えよう。

 

原本はインデックスを付けてファイルにしまって管理状態にしておく。

管理状態とは、複製をいつ何部どこに配布したのか等をファイルの見開きのページに記録する。

 

もちろん、その組織の上位標準が許していれば、全て電子化して原本データをサーバー上に置いても問題ない。

 

というか今なら出来る限り電子化すべきだろうね。

 

5.遵守し、

標準に従いそれを守るのは当然だが、守らずに≒守れずに問題が起きた時に、単にその担当者を叱責して済ませてしまうことが多いが、叱責の前に、その標準自体にその問題の原因がないか分析しなければいけない

 

他の新たな条件によって、その標準が遵守しにくくなっているかもしれないし、あるケースではもともと対応できないやり方だった、と言う可能性もある。

 

これまでにも書いてきたが、仕事上で叱責するのは多くの場合ただの手抜きだ。

 

とにかく、不遵守が原因だったとしても、その標準に改善の余地がないか、原因の一端がなかったかどうか、再評価しよう。

 

6.随時見直して

既に書いてきたが、随時見直す事が大切だ。

 

見直されずに放置してしまわないように、その標準に問題がなかったとしても1年に一度等、期間を決めて再審議するような仕組みにしておくといい。

 

但し、すべての標準を年に一度、例えば3月に見直すようにしてしまうと、作業量(メーカーではこれを”工数”とか”負荷”という)的に無理になるので、ある標準は4月、別のこっちは5月、というように、見直す時期を分散しておく

 

そういう工夫をしておかないと、結局「そんなの一度に見直すなんて無理だよぉ」という言い訳と共に守られなってしまう。

 

7.都度修正し、

見直しをして要修正箇所があれば、即修正をかける。

 

その際に、この標準は誰と誰が修正担当、とか係長、課長が審議、承認など、修正、審議、承認する人を決めておく(それぞれの権限を決めておく)。

 

「作成/修正」をする人と、それを「審議」する人は同一人物ではいけない。

 

小さな会社でよくあるのが、すべての標準を社長が承認するようにしているが、社長が全て把握したい気持ちはわかるが、そういう会社は往々にして社長のデスクに承認待ちの書類が山になって停滞している事がある。

 

権限移譲して、多くの標準は各部門の長でも承認できるようにしておくべきだ。

 

社長は、社の経営の根幹に関わる標準だけを確認すればいいだろう。

 

8.そのサイクルを回し続ける事

上記1〜7のサイクルが、常時且つ関係する社員の日常業務の一つとして回り続けることが最も重要だ。

 

このサイクルが止まると、「標準」が”経典”と化す

 

”経典”になってしまったら誰にも触れなくなり、標準が企業や組織の足枷になってしまうのだ。

 

この記事の最初に書いた誤解を持つ人々は、組織や企業の”標準”が放置され形骸化している状態の職場で働いているのだろう。そういう人達は不幸だな。

 

私が45歳くらいの時に、突然「古い製品なんですがみてほしいんですが」と製造の方から呼ばれて(その時は既に品質部門に所属していた)、行程に行ってみると20年以上前に私が書いた組立作業標準書(手書きの時代のもので個人的には懐かしかった)が、まだ使われていて、現状に合わないため作業されている方が苦労していた。

 

「技術部門に修正をお願いしても、標準通りにやってくれの一点張りで...tomoさんから一言言ってもらえないでしょうか?」と言うのだ。

 

20年前に設定したやり方だから、今はもう行程の環境も違えば、使われている標準工具も良くなっていた。

 

わざわざ20年以上前の古いやり方で、古い工具を使って仕事をやらされていて、標準書が作業ロスの元凶になっていた、というひどい話だった。

 

以上で「標準化」とはどういうものなのか、その根っこが理解できたと思う。

 

もちろんここで言っている「標準化」について、作業標準も伝票の処理手順も、新製品の開発手順も、社規則や品質マニュアル、全ての標準書に関して全く同じ考えでいい。

 

最後に、「標準化」に関する誤解を逆手に取ってズルく生きる方法もある、という話をしておこう。

 

「標準化」は多くの人たちに、胸クソが悪い、「マニュアル人間のこと」などと誤解されている。

 

と、いう事は、そういった誤解をしている人達と一緒に仕事している場合に、あなたがその作業や仕事のやり方を、文書化して標準書にしてしまうとどうなるか?

 

”王様”になれる

 

という話だ。

 

実際にあった話だが、私がセブ島に駐在していた時に、同じく駐在中社長職だった人と一緒に現地採用社員の昇格基準について決め規定化しておいた。

 

私もその社長も任が解け、日本に戻ってしばらく経った後、そのあとの駐在員の一人が逆出張で日本に来た時に、わざわざ私をさがして訪ねてきて、

 

「tomoさん!あの規定は困ります。◯✗いろいろ不都合があります」

 

と、文句を言うのだ。

 

私は思わず「変えればいいじゃん」

 

と言ったのだが、どうもそれが彼の貧弱な逆鱗に触れてしまったらしく、怒り始めてしまった。

 

私のいた会社では駐在中は一格上がり、且つ彼はその時マネージャーだったので、私より年下だが格は上だったというのもあったのかもしれない。

 

彼がいくら怒っても、もう別の職場にいる私にはどうにも出来ないが、それも気に食わなかったらしい。

 

しかし大きな声で散々文句を言ったのに、結局その彼が”気に食わない”その規定はそのあとも変更されず、そのまま運用され続けたという事だ。

 

要は自分達に”都合が良いよう”に”標準化”し文書化しておけば、”そういう彼ら”は従い続ける、というわけ。それも自分たちがいなくなった後も、だ。

 

「標準化」、文書化した者が王様になれる...場合がある。うまくやれば。というお話。

 

まぁ悪用はいけないが、なかなか言うことを聞かない人や、独特の価値観をもっていて問題を起こし続けるような人の内の何割かは、こうして文書化して”標準化”という名の下に従わせることが出来る(場合がある)ので、応用してはいかがだろうか。



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