久しぶりの登山ネタだが、前回の「道迷いの未然防止」で次回は軽量化について書くと予告した。
しかし”登山”や”トレッキング”といったキーワードで検索をかけてみると、軽量化のような各論を述べる前に、登山の事を知らない方や、”無謀な山歩き”を登山と勘違いされている方の為に、全体像を書いておくべきと考えた。
道迷いの挙げ句自力で帰還した、というストーリーのYouTube動画やブログの主は、
「誰にも迷惑をかけずに無事帰還した私はすごい」とか、
「めったに体験できない経験をシェアしたい」
というような勘違いに陥っている。
ハインリッヒの法則を思い出して欲しい。
「1つの重大事故の背後には29の軽微な事故があり、その背景には300のヒヤリ・ハットが存在する」
一度ヤバイ体験をした方は、次回以降でやり方を変えない限り、1/330という高い確率で同程度のヤバイ体験か、事故レベルの体験か、さらにはもっと深刻な遭難を体験することになる。というわけ。
そういうわけだから、先ずは最低限の知識を持とう。
知識さえあれば、どのように行動を改善すればいいかは、各自がある程度判断できるはずだと思う。
自分がどの様な山歩きをするのか?一般的な呼称はどうなっているのか?
以下はカテゴリー分けとして並列ではないが、用語の意味として羅列してみる。
ハイキング:平地または山岳低地歩く活動
トレッキング:標高に関わらず山岳地を歩くが山頂到達に拘らない活動
ピークハント:山岳地を歩き且つ山頂に達することを目的とする活動
バリエーション:登山道として整備されていない所をルートを探索しながら踏破する
雪山:ルート上に雪があり、滑り止めを必要とする
広い意味では上記すべてが「登山」だ。
よく「冬山」という表現をしているのを見かけるがこの名称は、活動の特徴を表しておらず、登山の用語として使うのは不適切だ。
例えば長野県内で「冬山」と言えば厳しい雪山登山を指すが、神奈川県なら丹沢山系の無雪低山への登山(ハイキング)ということになるので、シチュエーションが特定できなくなる。だから「冬山」という呼称は適切ではない。
ブログを書いている人で”登山”というタグを入れている方々の記事を読むことがあるが、やはり、というか、堂々と”登山”というキワードをつけている方の活動は、私達の年代からはかなりのエキストリームで、上記で言えばピークハントであり場合によってはバリエーションであり、更には雪山を指していることが多い。
だから、定年後の趣味としてやる「登山」は、まぁ「ハイキング」か「トレッキン」に「ピークハント」がセットになった ”程度” という事にしておくのが無難だ。
もちろん、若い頃に相応の経験をされている方は、「バリエーション」や「雪山」に挑戦されることだろうが、このブログではそういう登山をバリバリ趣味とされている方の趣向は除外させていただく。
「ハイキング」か「トレッキン」に「ピークハント」をセットし、「雪山」をやらない前提で、最初に知っておくべきことを書いてゆく。
1.体力
自分の体力がどの程度なのかを知っておく。
自分で簡単に計測が出来るので、先ずは信州大学の能勢先生の本を一読されることを、強く強くお勧めする。
特にこの本で得られる情報の重要なところは、本文52ページから説明されている、自分の「最大酸素消費量」の測定、そしてその結果から知ることが出来る自身の体力だ。
自分の体力を数値として客観的に知ることにより、無理のない計画が出来、且つ自身の体力に見合った重量を背負い、見合った速度で歩くことが出来る。
2.計画(歩行速度)
体力の測定によって知った速度を、コースに当てはめてみて、計画時の想定速度を知っておく。
例えば私の場合は、年齢の割に「最大酸素消費量」が小さいことがわかっている。実際の経験で登りの速度が他の登山者と比べて遅い事からも、この数値が裏付けられた。
一方、筋力は年相応の為、下りではコースタイムに対してオンタイム又は少し短縮が可能だ。
従って、測定結果と実際の山行経験から、コースタイムの1割増(=1.1倍)で計画すると丁度よい。
3.荷の重量
上記と同様に56ページの表を用いて重量に対する負荷を考慮する。
私の場合は、この表の数値と実際の山行経験から、ベースウェイトで9kg以下にすべきという指標を持っている。
ゆくゆく軽量化の記事で書くつもりだが、背負うことが出来る重量が決まれば持つべき(購入しておくべき)装備も決まってくる。
西駒ヶ岳のテント場に行くと毎回見るが、60Lの巨大なザックにオートキャンプかと思うほどのグッズやギアを詰め込んで登ってきて、「八丁坂死んだぁー」と叫んでいる人がいるが、ああいうのは登山の「テント泊」ではなく、山のテント場をキャンプ場と勘違いしているだけの人だ。
4.危険回避のマイルール
危険回避については、マイルールを設定しておくといい。
私の場合は、
「雪山、火山には登らず、メジャールートを基本とし、悪天候は極力回避する」
がマイルールだ。
だから私は絶対に噴火事故には遭わないし、雪崩に呑み込まれることはない。
もし誰かに「焼岳に登ろうぜ」と誘われても絶対に行かないし、ルートにまだ沈んでいない雪が残っている雪山にも登らない。
登山の経験が少ない方は、
「そこまで限定すると登れる山が減っちゃうのではないのか?」
と思うかもしれないが、そんな事はまったくない。
この条件にさらに「長野県内の山」という条件をつけたとしても、登りきれないほどの山があるし、あるききれない程のルートが有る。だからいくらでも楽しむことが出来るのだ。
次回こそは「軽量化」について書いてみたい。
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今日の一曲
「Little Heart」REI
*本ブログに掲載している広告とリンクを除く全ての写真はtomo1961又はその家族が撮影したものです。
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私のもう一つのブログ「50歳からの単独行」も、是非御覧ください。
50歳から再度山に登り始めたお話を小説風に書いています。
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