退職する前後、というか退職の2年前に役職から下りた時あたりからだろうか、”権威主義”について何度か考える機会があった。
例えば私が役職の時によく協力してくれたが、下りた途端に見向きもしてくれなくなった方が数人いた。彼らはもともと別事業の人達で、2012年に事業が統合された後仕事上の繋がりができたのだ。
一方若い頃から一緒に苦労を供にしてきた人はもちろん、同じ事業で私の事を知っている方々や、別事業だった方でも何人かは役職に関係なく以前と同じ関係を続けてくれた。
今回ここで考えるのは、上の例で言えば”肩書き”を見て行動を変える人たち、彼らは”役職”という権威を見て自分の行動を考えている。彼らのような”権威主義”ついて書いてみたい。
私はといえば、もともと後輩だった人が事業場長になろうが、もちろん仕事上で例えばもし同じ会議で互いに公式の立場ならマナーの上に立ち肩書やさん付けで呼ぶが、普段行き合って話をする時は呼び捨てだし、相手は私をさん付けで呼んでくれる。
役職を下りた人とも以前と同じように関わる。
私は”権威主義”ではなく、人と人の関係で会話しているしつき合っているからだ。
別の切り口で言えば、外車や高級車に乗っている人も2つに分かれる。
ベンツという車やそのメーカーの考え方が好きで乗っている人と、他人から”ベンツ様”に乗っていると見られたい人だ。後者が”権威主義”の人だ。
”権威主義”を持った人達は、その権威を支えている肩書や組織、ブランドに属している内はいいのだが、退職を期にその”権威”を失った後、うまく生きている人と、迷走する人とに、二分されているように見える。
随分と年が上の先輩だが、現役時代はやり手として名を馳せたが、退職後脳梗塞を患って今は歩くのにも苦労して、もう見た目が”よぼよぼ”になっているが、スーパーなどで行き合うと「おぃ久しぶりだな!」と精一杯声を掛けてくれた人がいた。
だが他方では、同じくバリバリだった人だが、今はもう老齢となってしまった姿を知られたくないのか、一瞬目があっても逃げるように商品棚の向こうに歩いていってしまう人もいる。
言うまでもなく後者が”権威主義”の意識を持っている人だろう。
誰でも歳をとれば衰えるし、そもそも退職した後は会社員時代のことなんてどうでもいい事だと思わないだろうか?
そもそも、いつも人を肩書で品定めしたりしていて疲れないだろうか?彼は彼自身に対しても”品定め”しているのだろうか?
退職したら会社や組織とは切れるのだ。
ブログなどで退職後に職場に顔を出す人がいるような話も目にする。もっての他だし現役社員にとっては例外なく、100%、迷惑な話なのだ。
「まだ俺の力を必要としている」なんて思っていたとしたら間抜けとしか言いようがない。そもそも、そんな力があるのならとっくに他から引き抜かれているハズだ。
セブ島駐在員時代に、私達が属していた事業の元本部長格だった人が、突然私達の現地工場を訪ねてきて、その時のGMに「俺をここで採用しろ」と言ったそうだ。当時のGMはその元本部長の元部下だったから、後で「困ったしびっくりしたし、呆れたよ」と言っていた。もちろん丁重にお断りしたし、私達駐在員にも面会させなかったし、守秘管理上の理由で工場見学もさせなかった。
私の先輩で、ある加工技術のさらにその”とある技術”に長けていた方がいた。
彼には退職のずっと以前から声がかかっていたそうで、退職日の翌日から、その声を掛けてきた会社で技術顧問待遇で働き始めていた。
本当に”デキる”人ってアアなるのかぁ、と心底感心した。
だからこれを読んでいるあなたも、退職のその日までどこからも引き抜きの声がかからなかったのなら、「自分が思っているような力は、あんたにはなかったって事だ」と言われたのと同じだ。それを事実として素直に受け入れて次に進んだほうがいい。
これまではその肩書で仕事ができていた、または出来ているように感じていただけ、という事だ。最悪の場合は「出来てないのに出来る人のように(まわりが)気遣ってくれていただけ」だったかもしれないのだ。
さて、ここまで読んでいただいて、既に退職した方々は素直に理解できたはずだ。しかし、これから退職する方の中には「いや、でも俺は特別」なんてまだ思っている人がいるかも知れない。
しかし既に書いたように、余程の特別/特殊な知識/技能を持っているのではないなら、あんたは”特別”じゃあない。
特に「いつも俺の鶴の一声で会社が回っていたんだよ。そういう能力が俺にはあるんだよ。」なんて言ってる人は、退職後は確実に役に立たないただのおっさんだ。
なぜなら”鶴の一声で仕事を回す”という、そういう事自体が”権威主義”そのものなのだから。
さてあなたはどうだろうか?権威主義に浸かって、溺れて、染まりきってはいないだろうか?
PS:組織の長として、”権威主義”に頼らずにうまく仕事を進めたいのなら、以下の書籍がバイブルとなるはずだ。
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